リスクマネジメントについて

基本的な考え方「リスクマネジメントに関する基本方針および行動指針」

1. 当社および当社グループは、当社グループの持続的成長の妨げとなるすべての事象を対象にリスクを管理す るとともに、法令や社会的規範、倫理・行動規範を含む社内規則を遵守し、適正な業務遂行を実施すること で、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図る。
2. 当社および当社グループの役員および社員は、具体的なリスクが発生した場合には、人命と身体の安全を最 優先とし、法と倫理を遵守し、モラルを持って実直に行動する。

管理体制

統括責任者	CEO	社内のリスク対応計画の立案、実施、点検、見直しおよび確実な遂行のために必要な経営資源の適正配分
実施責任者	リスク担当取締役	各種リスク対応計画の立案、実行の指示、全社調整
リスクマネジメントオフィサー	事業本部 グループ会社	各部門・プロジェクトの執行責任者として、リスク対応管理・フォローアップ
リスクマネジメント担当者	ディビジョン（各統括部門）	各部門・プロジェクトの各種リスク対応を推進
リスク対応活動者	デパートメント（各部門）	各種リスク対応を実施
リスクマネジメント事務局	CSR担当部門	リスクマネジメント活動のPDCAの推進

リスクマネジメントPDCAサイクル

「重要なリスクと主な対応・対策」／リスク一覧表

当社において認識している「特に重要なリスク（トップリスク）」および「重要なリスク」と、各リスクに対する主な対応・対策は、以下のとおりです。

■１．特に重要なリスク（トップリスク）と主な対応・対策

リスク項目	リスクの内容	主な対応・対策
各リスク共通 懸念される影響と対策	直接的な損害や課徴金・損害賠償・法的責任の発生等による多額の費用・損失の発生 事業・サービスの品質低下・長時間の停止等に伴う社会的信頼の失墜・評価の毀損・当社の株価等に影響を及ぼす可能性など	必要な経営資源の投下
①従業員およびお客様の生命・健康／労働災害等	従業員の労働災害や心身の健康が損なわれる 不慮の事故や突発的な災害、感染症の拡大 長時間労働による従業員の健康損害 PB商品に関連する健康被害	オフィスや物流センターの設備、車両等の維持管理と安全教育の徹底 建物や設備の防災対策の徹底と労働時間の管理 商品品質の管理部署を設置し、品質水準の維持と管理 お客様相談窓口を通じた品質向上のための情報集約と活用
②事業継続・サプライチェーンの分断*	① 自然災害 自然災害による事業所の同時被害による業績への影響 サプライチェーンの寸断や遅延による業績への影響	受注センター・お問い合わせセンター・物流センターを複数設置しリスクを分散 事業継続計画の見直しを継続して行い、拠点や体制の拡大、グループ内外の変化に応じて対応策の更新
	② パートナー企業への業務委託の継続性 パートナー企業の役割の見直しや契約関係の改廃による業務委託の中断 各パートナー企業の経営状況や経営方針の変化による業務委託の継続性	パートナー企業との良好な関係の維持 ビジネスモデルの進化と市場の変化に伴い、パートナー企業の役割や契約関係を定期的な見直し
③戦争、経済制裁などグローバルな情勢変化	サプライチェーンにおける政治体制の変化や戦争、経済制裁による商品調達の不安定化 地球規模の感染症や災害による原材料の高騰や供給困難による生産制限、製造原価の上昇 為替レートの急激な変動による仕入価格の高騰や商品調達への影響 複数業種の同時業績悪化や需給逼迫による調達困難の影響	サプライヤーに対し安定した商品供給体制の整備を要請 サプライチェーンの見直し、特に国内シフトへの変更を検討 原材料調達の持続可能性を確保し、環境問題に対処 国内外の経済状況の変化に対するリスク管理強化
④システム障害やサイバー攻撃	サーバーやネットワークの障害、不測の事態によるITシステムの停止 外部からのサイバー攻撃やコンピュータウイルスによる情報流出、破壊、改ざん 急激なアクセス増加によるシステムダウン システム障害により、事業運営の支障や社会的信用の低下、損害賠償の発生	サーバーの増強、分散化、最新化および通信回線容量の増強 基幹システムの二重化とリアルタイムバックアップ体制の整備 ネットワークセキュリティの強化による不正アクセスやウイルス対策 システムの安定運用と継続的なセキュリティ対策の実施
⑤大規模システム開発、設備投資の実施等	大規模システム開発や設備投資が想定外のトラブルで遅延、または中断 投資したシステムや設備の投資回収が困難・不能 技術進歩により、ソフトウェア等の利用可能期間が短縮され、償却負担が増加する 設備投資の効果が十分でない場合、減損損失の発生	周到な準備と綿密な計画を立案し、経営資源を適切に投入 トラブル発生に備えたスケジュール調整や追加費用対策の準備 投資対効果を事前に検証し、計画を実施 回収可能性の継続的な検討を行い、必要に応じて減損リスクを評価
⑥個人情報や機密情報の漏洩	お客様や取引先、従業員の個人情報や機密情報の破壊、改ざん、外部流出 競合他社への不正な情報提供 情報漏洩による信用低下や損害賠償費用の発生 情報漏洩に伴い、長期間の業務停止	委託先も含めた管理体制の構築とセキュリティ対策の実施 役員や従業員に対する情報管理やセキュリティ教育の実施 情報セキュリティマネジメントシステム（JIS Q 27001）の認証取得と運用 ネットワーク・セキュリティおよび情報管理の強化を継続的に推進
⑦法令違反、社会的要請への不適応に伴うレピュテーションリスク	コンプライアンス違反 （法令・規制等への抵触、不正行為等）	「ASKUL CODE OF CONDUCT（倫理・行動規範）」制定・周知徹底 コンプライアンス体制・仕組みの構築・運用 教育・啓発活動、法改正等の適宜把握と必要な対策・実施
	社会課題への対応・取り組み方が不十分・失敗	グローバルな社会課題解決に向けた積極的な取り組みの推進
	内部統制上の重大な欠陥・追加コストの発生	金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の整備・運用
⑧人材の確保・育成の不全	質の高い物流業務やテクノロジー人材の確保不能 経営戦略や組織運営に優れた人材の確保不能 人材確保の競争激化による人件費の増加や定着率の低下 事業環境の変化に対応できるスキルを持つ人材の育成が停滞し、人材の陳腐化	新卒採用と中途採用を強化し、継続的に優秀な人材を確保 ダイバーシティを推進し、働き方改革を通じた労働環境の整備 教育制度の実施や人事評価制度の整備で進化・変化に対応できる人材を育成 リスキリングを通じて人材のスキル向上を促進し、変化に対応可能な組織を構築
⑨ビジネスモデル変革の遅れ・経営環境の変化への適応不全	現在の成功体験に捉われ、新たなビジネスモデルへ変革の遅延 競合他社のサービス進化により市場優位性が低下し、お客様の離反 法令改定や制度変更に対応できず、ビジネスモデルが毀損 経営環境の変化に適応できず、収益構造悪化による競争優位性の損失	イノベーションとトランスフォーメーションを促進する人材の育成を強化 新しい働き方や人事評価制度の導入・整備により、変革へのチャレンジを支援 社会状況の変化に応じたビジネスモデルの見直しやアップデートを適宜実施 法令改定や制度変更への迅速な対応を行い、ビジネスモデルの適応力を向上
⑩企業の買収(M&A)・業務提携等におけるリスク	M&Aや業務提携において事前調査では確認できなかったリスクの発覚 買収後に予期せぬ事業環境の変化が発生するリスク PMIプロセスの不調によるシナジー創出の失敗 これに伴うのれんの減損損失や多額の追加費用・投資の発生リスク	M&Aや業務提携の検討時に十分な事前調査を実施し、承認プロセスを厳守 経営幹部間のコミュニケーションや重要会議で統合プロセスを定期的にモニタリング 統合後のリスク管理体制を強化し、進捗を監視 必要に応じて追加のリソースを迅速に投入し、PMIの円滑な進行をサポート

＊うち、気候変動への取り組みとTCFD提言への対応については、 環境 > TCFD提言に基づく情報開示をご覧ください。

■２．重要なリスクと主な対応・対策

リスク項目	リスクの内容	主な対応・対策
①商品の安全性および品質水準	商品の品質や商品情報等の瑕疵等による商品回収や製造物責任賠償等の発生	商品品質の管理部署の設置・管理 特に当社製造の食品・飲料等の食品衛生に関わる設備の充実、品質チェック体制の確立等
②商品情報の正確性担保	商品の表示内容に関する重大な瑕疵	人為的なミスを回避するためシステム化の推進 法令遵守のための専門組織を中心とする管理体制
③事業運営に関わる関連法規等による規制	関連法規や規制に違反した場合による営業活動の制限 担当従業員の理解不足や部門間連携の不手際による法令の不遵守	従業員への法令遵守教育や啓発活動を実施 規制改正や新たな規制について適宜把握し、必要な対応策を実施
④物流サービス	物流サービス品質：荷物破損・紛失、お客様情報漏洩等の不具合 重大な交通事故・法令違反の発生 燃料確保：燃料価格が高騰・災害等による燃料調達の支障 配送業務に関する環境変化：ドライバー不足、受託配送費値上げ、受託荷物の総量規制、配送費の大幅増加等	高品質なサービスの提供・維持 交通法規遵守のための教育や安全対策の徹底 環境活動や無駄を排除する活動等による効率的な配送 国内物流業者との協力関係維持、当社グループ配送ドライバー増員等による配送網の強化
⑤競合企業の新規参入	企業の新規参入や競合の台頭により、競争が激化し業績へ負の影響 技術革新の進展により後発企業が一気にシェアを拡大	エンジニア等専門家の採用・育成を進め、技術革新に対応 外部の先進的パートナーと連携し、ビジネスモデルを持続的に進化
⑥LINEヤフー株式会社との業務・資本提携契約	LINEヤフー株式会社との資本提携により、議決権の希薄化が生じる LINEヤフーグループが当社株式を追加取得することで、議決権割合が上昇する 自己株式取得や市場取引により、株価への負の影響 新たな株式発行や組織再編等による議決権希薄化	議決権希薄化が発生する場合、LINEヤフーに事前通知し必要な措置を実施 株式の追加取得に対し、事前に書面による通知と合意の義務付け 市場取引により議決権割合が上昇した場合、迅速に売却し割合を調整 資本提携契約に基づき、株式の希薄化が起きないよう管理

◎このほか、当社で認識している当社グループの経営成績、財政状態および株価等に影響をおよぼす可能性のある事項については、有価証券報告書の「事業等のリスク」をご覧ください。

事業継続計画について

アスクルでは、「アスクル事業継続計画基本方針」に基づき、具体的な被災想定のもと、さまざまな緊急事態に対応した事業継続計画を構築しております。「事業継続計画」においては、災害対策本部の体制、災害発生時における各種対応や手順を定めています。各拠点においては、水・食料や緊急避難袋を備蓄し、緊急連絡手段として、主要拠点に衛星携帯電話を配備しています。また、事業継続計画の遂行時の実効性を高めるために、随時、関係部署において計画やマニュアルの見直しも行っております。アスクルでは、従業員の安全を確保するとともに、緊急時においてもお客様へのサービス提供を継続し「明日届ける」というお約束を守るために最大限努力してまいります。

アスクルの事業は、お客様のライフラインであるとの認識のもと、事故・災害時における社会的責任を果たすため、以下の方針に基づき、アスクルサービスの継続的な供給に全力を挙げて取り組みます。

労働安全衛生と、物流・配送における取り組み

アスクルでは、労働安全と労働環境の向上を目的として「労働安全衛生委員会」を設置し、アスクルの物流を担うASKUL LOGIST株式会社を含む全社横断的な労働安全衛生への取り組みを行っております。
アスクルの物流を担う全国の物流・配送各拠点においては、継続的に、日々の安全対策・事故撲滅に取り組むとともに、業務品質の向上に取り組んでいます。

配送・物流現場における安全対策・事故撲滅への取り組み

ASKUL LOGISTでは、人身労災・物損あるいは交通事故の削減を目的として、日々の安全管理に努めています。
たとえば、配送においては、「無事故日車」（「日車」は日々の無事故稼働車両台数の積上げ）の目標設定、各拠点・物流センターにおいては、フォークリフトの「無事故日車」目標、また従業人数の積上げ計算から算出する「人身無事故日人」目標設定や表彰などを通じて、安全意識の向上・管理徹底を図っています。
また、各現場でのリスク低減・安全衛生水準向上のための継続的な取り組みとして、定期的なリスクの洗い出しと評価を行っております。
2016年後半からは「SF（Safety First）活動」と銘打ち、現場への安全靴貸与・使用の徹底のほか、各拠点長の人事評価に連動する形で、25項目にわたる安全項目の遵守状況チェック、現場での5S徹底状況の評価、外部の第三者の目によるリスク診断・指摘とそれに対する改善の進捗確認などを通じて、現場での地道な安全推進活動の強化に取り組んでいます。
これらの改善事例や対策・施策は、全国の各拠点へ共有され、ヨコ展開・整備・対応が図られています。

• 
  「歩行動線の明確化・安全対策の例」
• 
  「歩行動線の明確化・安全対策の例」
• 
  「避難経路の確保・明確化の例」

配送現場の安全性向上の取り組み、新人ドライバーの研修の充実

ASKUL LOGISTでは、2017年より、配送における更なる安全向上に注力してきました。従来から実施していた安全教育を強化・再編成し、社外の自動車教習所と提携し、3泊4日合宿形式の研修、座学やロールプレイなども含めたカリキュラムを構築、新人ドライバーへの教育研修の充実と、即戦力化・配送品質向上を図っています。配送ドライバーは、卒業検定や拠点配属後の単独乗務見極め試験など、何段階ものチェックをクリアーしてやっと、一人で配送することが許されます。
研修充実の背景には、世間的にも話題になっているドライバー不足と高齢化があります。アスクルグループにおける自社配送化の推進とドライバー増員の方針を受け、ASKUL LOGSITでは、新卒採用・中途採用を含め、配送ドライバーの採用・増員に力を入れていますが、ドライバーの若年化に伴い、ベテランに比較しての運転経験不足や配送品質の低下が懸念されました。今回の研修充実を通じて、配送ドライバーとして独り立ち・デビューするにあたって、本人も周りもお客様にも安心していただけるよう、日々取り組んでいます。もちろん、デビュー後においても、各配送拠点では、新人に限らず各配送ドライバーに対して、管理者による定期的な添乗指導を実施し、更に社外の添乗指導員を招き外部の知見も活用して、配送品質の改善・維持向上に継続して努めております。

• 
  「教習所での車両追突体験」
• 
  「夜間のヘッドライトの見え方の
  確認」
• 
  「座学研修のようす」
• 
  「教習所風景（群馬県前橋市）」

技能・サービス品質向上への取り組み・・・・各種競技会の開催

ASKUL LOGISTでは、2014年から実施していた「フォークリフト安全運転競技会」に加え、2015年からは倉庫内作業の精度を競う「物流競技会」、配送安全品質の向上を図る「ドライバーコンテスト」の3つの競技会を開催し、各分野での技術・技能の向上および作業・応対の品質の向上を図っています。
フォークリフトの運転技能向上を図る「フォークリフト安全運転競技会」のほか、「物流競技会」では梱包・検品・仕分けなどの倉庫内の各業務の正確性・品質を競います。また、「ドライバーコンテスト」では、実技として点検・運転技能を、学科として法令や車両構造等に対する専門的な知識を試験し、接客・ビジネスマナーについても、ロールプレイング形式で競技に含まれています。
これら、３競技会ごとに、各拠点での競技・選考を勝ち上がってきた全国各地の精鋭たちが一堂に集い、技術の確認と技能・品質の向上にしのぎを削っています。このイベントの開催は、各拠点での、通常業務（基本動作）などの各種ルールの遵守状況のチェック・点検、日々の業務精度の見直しや質的向上を図るきっかけともなっています。
加えて、拠点間・担当者間で切磋琢磨するこうした仕掛けからは、安全意識や業務品質の向上をはじめ、競技会に向けた技術・技能のたゆまぬ研鑽、高め合い・教え合う文化やプロとしての誇りの醸成、日々の業務へのモチベーション向上、拠点の現場担当者間の交流や情報交換など、さまざまな影響・効果がもたらされています。

• 
  「フォークリフト全国安全運転競技会」
• 
  「物流競技会」
• 
  「ドライバーコンテスト」のようす
• 
  「競技会実施に当たっての社内ポスター」

こうした各拠点現場における様々な取り組みを通じて、日々の業務の中での継続的な安全意識の啓発、事故の未然防止と安全性の向上を図っています。
アスクルおよびASKUL LOGISTでは引き続き、労働安全衛生への取り組みの強化を進めてまいります。