はじめに、今般の新型コロナウイルス感染症拡大により困難な状況にある方々に謹んでお見舞いを申し上げます。また、医療関係者をはじめ日々社会を支えてくださっているすべての方々に心より感謝と敬意を表します。
「利益の質」が問われる時代
かねてより環境問題や少子高齢化をはじめとする社会課題は深刻さを増しており、昨今のコロナ禍においてはマスクなどの衛生用品の高値転売や不良品の販売も社会問題化しました。
私は社員へのメッセージ発信の際、いつも「私たちの企業活動から得られる売上と利益に『大義』があるか」を問いかけています。
「持続可能」であること前提にした事業活動となっているか、裏に大きな犠牲や不安や歪みを生み出していないか、企業としての倫理観と「利益の質」が、ますます問われる時代になってきていると考えています。
パーパス(存在意義)、バリューズ(価値観)の策定、マテリアリティ(重要課題)の特定
こうした思いも背景に、アスクルでは、2020年12月、激変する世界においても、持続的な成長と持続的な社会の実現を両立させるための礎・行動の指針として、自分たちの「パーパス(存在意義)」と「バリューズ(価値観)」*を定め、社内外に発表しました。
合わせて、SDGs(持続可能な開発目標)に沿った当社の活動指針となる「サステナビリティ基本方針」を策定するとともに、ESG(環境・社会・ガバナンス)や各ステークホルダーの観点も踏まえ、2030年まで中長期的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、5つのテーマ・10項目、および、基盤としての3項目に整理しました。
*アスクルのマテリアリティ(重要課題)について: https://askul.disclosure.site/ja/themes/167
今後、取り組み詳細・KPIなどの検討・策定を通じて、サステナビリティ・ESGへの対応と経営計画との一体化・実現を図っていきます。
「DX」による変革
徹底的に無駄を排除し、最高の顧客体験を創造する。その実現には、テクノロジーの活用、DX(デジタルトランスフォーメーション)が鍵となります。データを駆使した商品と売り場の進化に加え、2021年2月からは、物流部門・IT部門を統合、テクノロジスティクス本部として再編し、最適な配送ルートや最適な在庫配置などを通じて、コスト改善、サービス品質向上、社会・環境負荷低減を同時にすべて実現すべく、バリューチェーン全体の進化を加速させる体制を構築しました。
「共創」によるイノベーション
特に気候変動や資源循環等の分野においては、「共創」によるイノベーションが不可欠です。お客様やメーカーとの共創による「資源循環型プラットフォーム」の実現を目指して、廃棄カタログや使用済みクリアホルダーの回収・再商品化などの取り組み・実験を始めています。
SDGsの目標達成に向けては、企業やNPOに限らず、行政や様々な組織との「共創」も必要です。2021年2月に締結した長崎県対馬市とのSDGs連携協定を通じては、海洋プラスチックごみやサーキュラーエコノミー(循環経済)といった課題に、共同で取り組んでいきます。
(環境)次世代につなぐ地球環境への貢献
喫緊の課題である脱炭素・気候変動への対応については、2016年に「2030年CO2ゼロチャレンジ」を宣言、2017年にRE100・EV100へ加盟し、電気自動車や再生可能エネルギーの導入を進めています。
直近では、一部ですが、電気自動車を物流センターの再生可能エネルギーで充電するというCO2排出ゼロのお届けが実現し始めています。
こうした取り組みの評価をいただき、CDP気候変動に関する調査において、最高評価の「Aリスト」に2年連続(2019・2020)で選出されました。*
また、2019年3月には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)**の提言に賛同を表明しました。今後、気候関連のリスクおよび機会が当社事業に与える影響を検証するシナリオ分析を実施し、適切な情報開示を行うとともに、次世代へ地球環境をつなぐため、自社としての備え・機会の拡大を図っていきます。
*関連リリース: https://pdf.irpocket.com/C0032/j9N9/ncO8/XBq5.pdf
**気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD):Task Force on Climate-related Financial Disclosures
関連リリース:https://pdf.irpocket.com/C0032/bFn0/DhzL/fgos.pdf
(社会)責任あるサプライチェーンの構築
「責任あるサプライチェーンの構築」という課題においては、災害・非常時にもお客様のための「ライフライン」としての責任を果たすべく、事業のレジリエンス(柔軟で強靱な回復力)を一層強化していきます。
今回の新型コロナウイルスの影響下においても、常に事業の継続性を確保しながら対応を進めていますが、さらに、行政等と連携し、お客様データ・購買データを駆使して、医療関係者に必要な物資を供給するシステムを構築することで、買い占め等の社会課題の解決に取り組み、危機の中で問われる社会インフラとしての進化にチャレンジしました。*
また、「責任ある調達」の面では、今後、人権・環境・労働・品質等に配慮したサステナブル調達方針を定め、サプライヤーを始めとしたステークホルダーの皆様とともに課題の確認・解決に取り組む予定です。
*関連リリース:https://pdf.irpocket.com/C0032/mxGt/NyGX/EcOb.pdf
https://pdf.irpocket.com/C0032/j9N9/vfE9/OF8W.pdf
(社会)人材育成・健康経営
これらのマテリアリティ(重要課題)の解決に取り組むのは、やはり「人」です。
人を活かす「ダイバーシティ」は、成長戦略であると同時に、企業にとっての生存戦略であると言えます。
たとえば、女性活躍推進の面では、課題と取り組みを見直し、「2530」(2025 年までに女性管理職比率30%)を新たなコミットメントとして宣言しました。今後はさらにアスクルの成長を担うデジタル人材の育成にも力を入れていきます。
また、物流センターでの障がい者雇用の積極的な推進は、現場での継続的な取り組みの成果として、生産性の向上にもつながっています。*
新型コロナウイルス感染が拡大する中、物流やコールセンター等の出社を前提とする業務においては、現場での感染対策を徹底・早期対応を図りながら、事業を継続しています。また、オフィス勤務者のうち、在宅で業務を行える部門は、これを機に、テレワークを基本とする働き方にシフトしました。
従業員の健康と安全を最優先としつつ、業務や家庭の状況等、個々人が置かれている状況に応じて多様な働き方をサポートしています。
「基盤」としての「心身ともに安心・安全に働ける健康経営」に配慮しつつ、DXを含めたオフィスのあり方と働き方の改革を進めていきます。
(ガバナンス)透明性の高いガバナンス
ガバナンス面においては、2020年3月開催の臨時株主総会において新たに独立社外取締役4名が選任されたことで体制を再構築するとともに、これらの独立社外取締役等で構成される「指名・報酬委員会」の設置・運営等を通じ、ガバナンス体制を強化しました。
2021年2月現在、独立社外取締役の割合は1/3超となっています。
選任にあたっては、候補者の指名基準および指名プロセスの公表といった、高い透明性を確保することで、当社からも主要株主からも独立性が高く、かつ、多様性と各分野の専門的知見を備えた独立社外取締役の選任が実現しました。
同時に、独立社外役員を構成員とする「独立社外役員会議」を新設し、主要株主との建設的な対話が実施される等、当社グループの企業価値向上、ガバナンスのあり方について、活発・積極的な意見交換が行われています。
今後とも、少数株主の権利に十分配慮するとともに、株主・投資家や様々なステークホルダーとの対話を深め、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、より透明性の高いガバナンスを目指します。
持続的な成長に向けた思い
アスクルは、今後も、環境や社会課題の解決に対し真摯に取り組み続け、『仕事場とくらしと地球の明日(あす)に「うれしい」 を届け続ける。』企業として、持続可能な社会の実現を通じた新たな成長を目指していきます。
2021年2月