パーパス(存在意義)に込めた想い
2020年に定めたパーパス(存在意義)は、「仕事場とくらしと地球の明日に『うれしい』を届け続ける。」です。変化が加速する時代においては、働く仲間一人ひとりが同じベクトルで、タイムリーに自律的に判断し、行動することが大切です。アスクルには「お客様のために進化する」という創業以来不変のDNAがあります。それはアスクルでの私たちの生きざま、働きざまそのものですが、お客様のための進化の先にどんな社会的責任を果たすのかをパーパスとして定めることで、自律的な判断、行動の礎にしたいと考えました。人々の仕事や日常を支えていく存在であることを踏まえて「仕事場とくらし」を掲げ、「明日」「届ける」を、スピードを表す言葉としてだけでなく、地球の明日=未来をよくするという意味で新たに定義したことが、このパーパスの大きなポイントです。
社員に対しては、パーパスと一体として定めたバリューズ(価値観)の体現によるチャレンジスピリッツとチームワークの確立を特に期待しています。主体性、建設的志向、そして、行動重視の姿勢を貫いていってほしいと思います。予測不能な時代にあって、未来は自分で創り出すという考えをすべての社員に持ってほしい。お客様のために進化するには、自分たちが「最速で変化」していかなければなりません。「多様性と共創」とは、多様な意見を取り入れて向かい合い、チームワークで共創することです。そこに「誠実に」向き合い、「誇り」を持って臨んでほしいと思っています。
エシカルeコマース
社会価値と経済価値を両立させるトレードオンが、私たちの使命
新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会環境は大きく変容し、テレワークの浸透などによってお客様の生活様式にも大きな変化が生じました。これまでのオフィスという働く場所の概念も大きく変わってきました。私たちの主力ビジネスであるBtoB事業では、テレワークやペーパーレスの進行によってオフィス用品の販売が減少した一方、医療・介護、製造業、物流などのエッセンシャル業種のお客様向けの衛生用品や生活用品は大きく拡大し、私たちの幅広いお客様業種と品揃えの強みが発揮された結果となりました。BtoC事業でも、巣ごもり消費や家事負担増への対応といった新たな需要が生まれ、日用品購買のEC化が進むという大きな変化が表れています。BtoBもBtoCもEC化傾向は加速しており、EC事業の競争は激化しています。
マクロ環境としては、少子高齢化に伴う人手不足、テクノロジーの進化、サステナビリティ社会実現への強い要請が顕在化し、私たちを取り巻く変化のスピードはこれまでとはまったく異なる次元に達しています。このような環境を踏まえ、「お客様のために進化する」というDNAを体現して、サステナビリティとお客様便益を同期化すること、すなわち「エシカルeコマース」によって、私たちの商品・サービスがお客様の便益を満たすとともに、社会に貢献したいという自らの要望を満たしていくことで、環境や社会に負荷をかけない企業体を目指していきます。ECプレイヤーとして、社会価値と経済価値を両立させるトレードオンの実現こそが、私たちの使命だと考えています。「アスクルを使うことが、最も便利で最も社会課題解決に貢献する」、そんなサービスに変革していきたいです。
「オフィス通販からのトランスフォーメーション」
中期経営計画において、これまでのオフィス通販から脱却し、あらゆる仕事場とくらしを支えるインフラ企業となる、という変革目標を掲げました。2025年5月期には、現在より1,000億円以上上回る売上高5,500億円、営業利益率5%、ROE20%を目標としています。「サステナブル経営」「お客様価値最大化」「高収益モデルへの変革」の3つの基本方針を定め、社会課題の解決を事業と一体化して推進していきます。
BtoB事業は、全国の中小事業所をメインとしたあらゆる業種のお客様にご利用いただいており、その国内トップクラスのお客様基盤を活かし、従来のオフィス用品に加え、医療・介護や製造業といったエッセンシャル業種のお客様が仕事場で使用される商品の品揃えや環境に配慮したオリジナル商品を拡大し、ワンストップで使いやすいECサイトへ進化させます。BtoC事業のLOHACOは「くらしをラクに楽しく」をミッションに、生活便益とサステナビリティを兼ね備えた独自商品の開発をメーカーと共同で実現しつつ、大きなインターネット集客力のあるZホールディングスグループ(ヤフー、LINE、PayPay等)と連携し、お客様のさらなる拡大と再成長を目指します。
さらに、強みであるあらゆる業種の中小事業所のお客様基盤を活かし、新規事業にも積極的に挑戦していきます。これまでの物品購買を超え、中小事業所の課題解決につながる様々なサービスを展開していきます。
中期経営計画の実現の鍵となるのは、やはりテクノロジーです。ビッグデータ活用、AI活用などのDXノウハウを蓄積し、Zホールディングスグループとも連携し、DX人材の育成を強化していきます。
経営基盤
コーポレート・ガバナンス
現在、コーポレート・ガバナンス体制については、改訂された「コーポレートガバナンス・コード」に準拠した整備を進めており、まだ改善していく点はありますが、問題なく機能していると認識しています。取締役会では、多様で活発な意見交換がなされており、社外取締役からも、各々の専門分野からの視点も踏まえた新鮮な意見、時には厳しい提言もなされ、多面的な意見を踏まえた上で意思決定ができていると考えています。2021年来の取締役会で最も議論していることは、中期経営計画の策定、進捗、実現に向けた取り組みについてです。従来、社外役員から長期的視点が必要という意見があり、最短でも10年くらい先を見据えた議論が必要であるという認識のもと、「オフィス通販からのトランスフォーメーション」を軸に、中長期における規模の拡大、構造的な変化をどのように進めるかについて議論を重ねています。
また、大株主と独立役員との定期的な意見交換の場も設けており、アスクルの企業価値を向上するにはどうしていくかという視点でコミュニケーションを深めています。大株主の独立役員と当社独立役員による対話なども積極的に実施しており、いわゆる親子上場と言われる関係の中で、コミュニケーションを強化して認識の共通化を図っています。
ダイバーシティ
社会そして会社は、様々な人々による多様性(ジェンダー、国籍、年齢、信条、障がいの有無など)で成り立っています。企業経営の観点でも、多様性があるほうが、リスク低減、新しい発想創出、正道を踏み外さない安定的な経営に近づくと考えています。
このような基本認識のもと、2025年までに女性管理職比率を30%とする経営目標(以下、2530)を掲げ、アンコンシャスバイアス研修をはじめ、任命、育成、働く環境等の進化を通じて実現したいと考えています。今は、これまでの画一性がもたらした不自然な状態を意識して是正するフェーズである、と強く認識しています。
「多様性と共創」という価値観は永遠に続くものです。2530は数ある多様性尊重のはじめの一歩であり、共通指標として活用するための可視化された手段にすぎず、通過点です。長い目で見れば多様性という言葉が意識されなくても、自然に多様性が活きて相互尊重し合う会社にしていきたい、それが私の想いです。
アスクルの強み・企業文化
お客様基盤を強みに、エシカルeコマースとして選ばれる企業を目指す
私たちの最大の強みの1つは、BtoBのお客様基盤です。様々な業種の事業所のお客様にご利用いただいていることは大きな経営資源です。それによって、多様なデータ収集も可能になり、物流もサービスも商品開発も進化してきたのです。お客様基盤は、創業以来お客様視点で事業を進化させ続けてきた賜物と考えています。この「お客様視点」での進化の原点となったのは、私たちがまだプラス株式会社の一事業部だった時代に、競合である大手文具メーカーの商品の取り扱いを始めたことでしょう。メーカーの一事業部が競合他社メーカーの商品を販売することはある意味タブーであり、また、それまでは卸し先ごとに値付けしていた商品を、カタログで同一価格、しかも安価で販売することは、非常識と言われていました。今では業界の常識ですが、これに挑戦したのがアスクルであり、お客様のために進化するという私たちの姿そのものだったのです。今もこの企業文化はしっかりと受け継がれています。
2023年5月期は、オフィス通販から「すべての仕事場とくらしのインフラ」への構造転換を図ることと、「エシカルeコマース」として選ばれる企業となり、サステナビリティと利益拡大を両立させるモデルへ転換するための礎づくりに取り組んでいます。創業から30年続けてきたアスクルの「OS」をバージョンアップさせ、進化させるのは次の世代だと考えています。これからの30年を担うリーダーは、「ASKUL WAY」を体現する人材です。大事なのは私たちのパーパス(存在意義)を体現していこうという志と熱意です。構造変革を遂げることで、アスクルはもっとお客様の役に立ち、もっと社会課題の解決に貢献し、そして社員ももっと豊かになれる、そう確信しています。
今後、日本の中小企業・事業所をどうやって元気にしていくかがとても重要だと考えています。デジタル化を含めて生産性を上げていくこと、人手不足を乗り越えること、これらは言わば国家的な課題だと考えています。アスクルは、中小企業・事業所については最大規模のお客様基盤を持っています。これらのお客様のためにご提供するサービスは極めて大きな可能性を秘めており、社会に貢献するという意味でも、私たちにとって本当にやりがいのある仕事です。まさに「仕事場とくらしと地球」に「うれしい」を届け続ける、アスクルならではのミッションに今後も挑み続ける決意です。
ステークホルダーの皆様には、これからのアスクルに、ぜひ、ご期待いただきたいと思います。
2022年11月